トップ > 健康・医療・福祉 > 障害者支援・地域福祉・生活支援 > 支え合い活動の今に迫るWEBコラムシリーズ > WEBコラム【第8話】地域の担い手確保。後期高齢者が未来描く
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更新日:2024年03月25日 15時52分
「1日に10人以上と会う。SNSは毎日発信する。100歳まで元気に活動するためです」。
地域を支える人を増やす活動を行う江上憲一さんの自己紹介の冒頭は「私は後期高齢者です」。80歳を迎えた今も、タブレット端末“iPad”やビデオ会議アプリ“Zoom”を片手に、市内各地で多くの仲間とさまざまな活動をしています。
江上さんは、生涯学習や認知症対策など18の団体で活動しています。設立に関わった10以上の団体の中で、地域デビューを後押しする「地域活動応援塾・くるめ」が活動の中心です。
「組織も地域も人を育てないと目標に近づけないと思っています」と江上さん。活動の根っこには、サラリーマン時代に感じた“人材育成の重要性”があります。退職後、久留米に戻り、自治会の役員や民生委員がなかなか交代できないという現実に直面し、後継者不足を実感。「人材開発部門を担当した経験から、良い組織はきちんと社員育成をしていることを知っています。それが活動の原点で、行き着いたのが『応援塾』なんです」。
インタビューに答える江上さん。「私が活動できるのは、妻の強い理解と影ながらの支えがあってこそです」と感謝を忘れません
「2017年、市内で開かれたあるシンポジウムの会場で “3カ月後に集まって、支え合いについて語りませんか”というチラシを配りました。そして、集まった30人ほどで応援塾の前身『地域の支え合い実行委員会』を設立し、月1回の勉強会を開催。真の目的は“人財”の発掘・育成です」。
江上さんは現役を引退した人の力を大切にします。「65歳はまだまだ元気ですし、その人たちの経験や人脈を生かさないのはもったいない」。2018年に今の名称に変更してからは、講座テーマを“居場所づくり”に絞りました。“1日10人以上と会う”江上さんは、人との関わりが、暮らしや動きに良い効果をもたらすことを経験済み。「引退したばかりの人は人間関係に疲れている人も多い。でも仲間ができれば、素直にうれしい。居場所は人とつながる場。誰かと常に触れ合うことで、知らないことにも出会えますし。そうした先に、行動が変わるのだと思います」。
応援塾よりも以前から地域の担い手づくりに取り組んでいる北九州市の市民団体「夢追塾」との交流の一コマ。地域課題などを情報交換しました
2020年9月18日に開催された応援塾の講座を取材しました。この日のテーマは「オンライン活用の居場所づくり」。オンラインを生かした市民活動に取り組む団体から講師を迎え、実践事例や各地域で広がる活動を紹介。その後Zoomを体験する時間も設けられました。参加者は持参したタブレットやスマホで、市外に居る団体スタッフと実際に通信。「コロナ禍でほとんどの地域活動がストップしました。新しい生活様式の中での居場所を考える時、オンラインは欠かせません」と江上さんは考えています。
オンラインの居場所づくり講座。10人ほどの参加者の多くが高齢者でした
最近、江上さんの元にタブレット講座やZoom講座をやってほしいと、校区からの相談が増えています。江上さんが立ち上げた団体「NPO法人新現役の会ちくごセンター」で長年やっている「iPadで脳トレ」のノウハウや機材を生かして、要望に対応します。
しかし江上さんは、“高齢者にとってのIT機器の重要性”を認識してもらうことが先決だと考えています。「高齢者はどんどん行動範囲が狭まり、人と会うことすら難しくなっていく。災害時の避難にしても時間がかかる。高齢者にこそITは必須なのです。新型コロナでさらにそれが明らかになりました。技術的な講座より先に、必要性を分かってもらうための講座を提案しています」。
青峰校区まちづくり振興会の役員が対象のZoom研修会。基本操作からチャットやミュート機能などのオンラインならではの技術やマナーまで紹介
青峰校区では、高齢者を主な対象とした「iPadで脳トレ」も開催。IT機器に親しむきっかけになっています。多くの人に会うので、江上さん自身も感染対策にしっかりと取り組んでいるそう
エリアを限らず、幅広い分野で活躍する江上さんが描く活動の理想形は、意外にも“身近な場所で小さく活動すること”。「最終的にはそれが望ましいと、最近思うようになりました。だれでも年を取ると動ける範囲が狭くなるから、自分の住むエリアで小さな活動をする人が増えるのが理想だと思っています。そのためには、もっと担い手を発掘していかないと」。“100歳まで地域活動をやる”ことを目指す江上さん。20年後、仲間と進める活動が、久留米にどんな花を咲かせているのでしょうか。
応援塾で自身も講座に参加する江上さん。楽しそうな表情が印象的です
(第8話終わり)
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WEBコラム「みんなで生きる、みんなが活きる」