トップ > 健康・医療・福祉 > 障害者支援・地域福祉・生活支援 > 支え合い活動の今に迫るWEBコラムシリーズ > WEBコラム【第6話】絆を地域に、日常に。
0070
更新日:2024年03月25日 15時57分
“10万人”と“女子会”。一見不可解なネーミングに、いったい何者かと構える人も少なくありません。
久留米10万人女子会は「久留米で暮らす13万人の女性。10年後に10万人がつながり、自分が望む地域暮らしができること」を目標に活動する市民活動団体。2016年、「久留米100人女子会」というイベントが始まりでした。久留米や近郊で暮らす女性がつながり、暮らしや仕事を充実させたり可能性を広げたりする場として開催。翌年には名前を「1000人女子会」に変え、規模を拡大。毎年開催していきました。
2017年に六角堂広場で開催された1000人女子会。参加者は自分ができることややりたいことをゼッケンに書き、つながりづくりのきっかけにします
そして2018年。名前を「久留米10万人女子会」とし、動きを大きく変化させました。始めたのは「ラボ会」。校区単位の小さな女子会を市内全域に作りました。「つながりは日常に根差していないといけないのではということになって。そこで身近なエリアで緩やかに集える場を作ろうと思ったんです」と國武さんは振り返ります。
國武ゆかりさんは、発足当時から運営の中心メンバーの一人。100人女子会のころからを振り返りながら話してくれました
ラボ会は「地域暮らしの研究」をテーマに月1回、約2時間、自由に語り合います。近くで暮らす人同士ならではの会話が生まれ、つながりが一つ一つ紡がれていきます。「年に一回のイベントで同じ関心を持った人同士とのつながりから生まれるものもある。しかし、困りごとや悩みは日常の中にありますから」。
2020年9月28日に行われた、北野校区ラボ会。参加者は5人。ランチを囲みながら、最近あったことやこれからの予定、ちょっとした悩みやうれしかったことを披露し、共感し合う和やかな時間が流れます
北野校区ラボ会に参加している井元智子さんは、ラボ会の価値を「頭で考えるのではなく、心で感じるもの」と言います。「高齢化は進み、空き家は増加。支え手は増えず、活気も落ちる。この地域にも課題がたくさんなのに、みんなどこか対岸の火事のようなんです。私もそうだったけど、地域に愛着を持つ人が減っているのだと思います。ラボ会ができて、違う年代の人や接点がなかった人とも顔見知りになりました。そしてお互いに『大丈夫だよ』『やってみようよ』などと関わり合い、応援し合えています。こういうことを繰り返していると、気に掛け合う人が増え、それが地域への愛着につながる気がしています」。
井元さんは昨年からラボ会に参加。きっかけはチラシ。なんとなく参加しましたが「みんなが応援してくれるから、新しいことにも挑戦しようと思えるんです」と、今では参加者の中心的な存在に
そして2020年。新型コロナウイルスの流行で、あらゆる活動がストップする中、10万人女子会は新たなチャレンジに踏み切ります。
「長年まちづくりを担っている校区コミュニティ組織との距離を縮めたい」。女子会事務局は、46の校区コミュニティ組織を訪れ、校区が何に困っていて、どのようなニーズを持っているのかのインタビュー調査を行いました。「目指したのは顔の見える関係づくりでした。はじめはやっぱり敷居を感じていたけど、会ううちにいろいろ教えてくださるようになってきて。だから私たちも何か一緒にできないかなと自然に考えるようになっていました」。國武さんたちは、出来上がった報告書を校区に直接手渡しで届けました。
下田校区コミュニティセンターで開かれた「まちおこし隊会議」で協力を呼び掛ける國武さん
こうして育んだ関係性から、校区と連携した企画が実現しました。田主丸の魅力を再発見するバスツアーと、城島での婚活イベント。企画段階だけでなく、集客から当日の運営まで、校区の住民が手伝ってくれました。國武さんは「校区の皆さんと一緒にやって感じたことは、自分のまちを良くしたいという気持ちはみんな同じだということ。世代の違いはあるけど、お互いを知れば関わりあっていけるとわかりました」。
田主丸バスツアーのガイド役を務める事務局メンバー。手作り感のある企画も10万人女子会の魅力です
「わたしの事はわたし達の事」。10万人女子会が大切にしている言葉です。自分たちだけが良ければそれで良い、ではありません。いろんな団体や地域との連携で、共に久留米の未来を考え、話し合えることの大切さに改めて気付いたと國武さんは話します。
人とのつながりから生まれるものは楽しさや安心だけではなく、このまちで暮らす一人として考え始めるきっかけや、大切な気づきをもたらしてくれるようです。
(第6話終わり)
支え合い活動の今に迫るこのシリーズの記事一覧は下のリンクから。
WEBコラム「みんなで生きる、みんなが活きる」