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【グッチョVol.35】とにかく笑えれば/どこそこ一枚・私が今困っていること

更新日:202411071000


【あそこであげなこつ】居場所×○○○

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テキスト版

(リード)
「独居だから居場所が必要なんじゃない。家族と住んでいても―」。高齢者が集い、農作物の出荷のための仕分けなどを行う「姫の会」。発起人で顧問の髙山憲行さんが思う居場所とは。取材に行くと、そこには多くの人の笑いがあふれていました。
(本文)
【安心して話せる関係性を】
 田主丸町柴刈。筑後川の土手から下った場所にあるプレハブ小屋が「姫の会」の作業場です。会員は9人でほとんどが高齢者。週5日、6~8人のメンバーが集まります。近所の農家で取れたネギを出荷用に束ねたり、モリンガという植物の葉を摘み、パウダーにするために乾燥させたりしています。
 9時頃、作業開始と共におしゃべりもスタートします。「話す内容はたわいない世間話たい」と髙山さんは言うものの、憎まれ口に昭和ギャグ、そして愚痴。とても書けないようなイジリ合いもありつつ、でもみんなで笑い合っています。そんな会話には明確なルールがあります。ここでの話は口外しないこと。「田舎は他人の家の中のことまで見えてしまう。だからこそ、ここでは安心して話せるという関係性を作りたいんです」。
【単なる居場所じゃ面白くない】
 姫の会は5年前に誕生しました。「地域の高齢者が楽しく元気に暮らしていくための集いの場を作りたい」との思いで、代表の髙山ハルミさん(顧問と同じ名字なので、以降ハルミさん)と一緒に立ち上げ。当初は隣接する直売所「川の駅しばかり」の軒先を借りてホウレン草やパセリを揃える作業をしていました。「屋外はさすがに高齢者には過酷で」と、近所の民家の倉庫を借りて作業場に。令和4年、川の駅の事務所として使われていたプレハブ小屋に移転して現在に至ります。
 「単なる居場所じゃ物足りない」と、農家の出荷作業で工賃を得たり、モリンガで商品を開発したりして収入を得ます。「そのお金を貯めて、誕生会として食事に行ったり、日帰り旅行に行ったりしています」と髙山さん。「農家も人手不足。そこに高齢者にもできる作業がある。それをやらされるのではなく先の楽しみにつながるような形でやれれば良い居場所になると考えます」。
【しょんぼりしても始まらん】
 メンバーの多くは意外にも家族と同居している人が多いのだそう。髙山さんは「家族と一緒に暮らしているから居場所がいらんわけではない」と訴えます。「高齢者は邪魔者扱いされたり、疎まれたりされがち。電気代も高いから家に居づらいことも。だからこそ、こうした場が必要なんです」。さらにこう続けます。「それに、笑えんと落ち込みがちになるけんですね。病気したりするとなおさらです」。
 いつも笑いの中心にいるハルミさんは55歳で食道がんを発症。「診断は末期で、余命宣告されました。手術のため半年の入院し、パートを退職しました」。その後、奇跡的に回復。77歳になった現在も作業場に通いながら自家の畑で農作業もこなしています。「乳がんも経験したけど、命がもう短いとしょんぼりしとっても始まらんもん。みんなで作業しながら笑って暮らすことが、自分の気持ちも良くしてくれる。やけん病気もどっかに行ったとやろうね」と話します。
 がん、脳梗塞、精神疾患。メンバーの多くは何らかの病気を経験しています。各々のタイミングで同会と出会い、居心地の良さから毎日訪れるようになったと話します。「家族だから話せないこと、笑えないこともある。ここで楽しいと思える時間が何より大事。健康にも絶対に影響するはず」とハルミさんは太鼓判を押します。楽しい場にするには、共通の目的を持つことだと髙山さん。「私たちは『1日1日を楽しく生きよう』が目標。余命がいくばくもない高齢者が大半。私もパーキンソン病になった。だからみんなで笑うんです」。
 ふと、作業所のカレンダーに目をやると、作業内容以外に何かが書かれていました。それはメンバーの通院の予定です。「予定をすぐ忘れるやろが。ここに書いとくと誰か言うてくれるけんね」と髙山さん。「でも予約が夕方やったら、顧問はここを出てから1~2時間で忘れるもんね」とメンバーが笑います。

 カレンダーにも表れる温かな見守り合い。取材時も、転んで起き上がれない時に助けが呼べるよう、会で笛を購入しようという話になっていました。「いざという時に、即座に動き合える関係性はできていると思いますよ。ハルミさんがもし畑で倒れていてもすぐに見つけられるよう、いつも『派手な服を着ておいて』と言っています」と笑う髙山さんに、ハルミさんが応じます。「確かに最近、私にも緊急事態があったね。そりゃあみんなすぐ動いてくれた。スマホ紛失事件ね」。作業場には今日も笑いがあふれています。(担当・フトシ)

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