トップ > 計画・政策 > 人権・同和問題・男女平等 > 人権啓発 > 共に生きる(広報紙) > シリーズ【42】被害者も加害者も生まない社会へ
0420
更新日:2024年10月30日 14時00分
交通事故で娘を亡くした経験を基に、日常の大切さを伝える活動を行う池田かおりさんに聞きました。
8年前の夕方、小学校の先生から娘が事故にあったと連絡がありました。当時小学1年生の三女(陽菜)が、遊びに行く途中で車にはねられて心肺停止だというのです。家族にそんなことが起こるとは思いもしなかったし、「助かる」と信じながら病院に駆け付けました。そこには懸命の救命措置を受ける娘がいて。「目を開けて」と祈る思いで声をかけ続けましたが、反応がなく「もうダメなんだな」と少しずつ状況を理解し始めました。
姉たちが見守る中、病院の先生が「もうこれ以上は陽菜ちゃんもきついよね」と陽菜に語りかけました。死亡宣告だと分からないよう言葉を選び、家族が受け入れられるよう配慮してくれたのです。警察官も「事故の真相は必ず究明するので安心してください」と言ってくれました。加害者からの謝罪もあり、恨みを抱えずに陽菜だけに向き合えるようになりました。
亡くなって数日後、娘との思い出をイラストで書き始めました。どんな毎日だったのか、いつか忘れてしまうのではと不安になり書き留めておこうと思ったのです。そんな中、学校から届いた娘の作文に「わたしは ゆうえんちにいくことがすき みんなのえがおがみれるから」とありました。周りの人を笑顔にしたいという娘の思いを引き継ぎ、被害者も加害者も生まない世の中になるようにと活動をスタート。娘の日常を書き留めたイラストを絵本にして、当たり前に過ごせる日々の尊さを伝えたいと思っています。
大切な人が事故に遭って、そのことに触れられたくない人も多くいると思います。私の場合は、周りの人が「陽菜ちゃんはこうやったね」と話題にしてくれたり、講演会で話したりすると娘を近くに感じます。悲しみが癒えるには誰しも時間がかかります。残された人の日常が続くよう、今までと変わらない態度で接することが支えになるのではと思います。
絵本で池田さんが一番好きなページは、陽菜ちゃんが生まれたての弟を抱っこする場面