トップ > 計画・政策 > 人権・同和問題・男女平等 > 人権啓発 > 共に生きる(広報紙) > シリーズ【36】人との結びつきが回復につながる
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更新日:2024年04月25日 09時51分
ギャンブルをはじめ、さまざまな依存症に悩む人や家族から相談を受けたり、集まれる場を開いたりしている矢ヶ部公治さんに聞きました。
司法書士として破産手続きの相談を受けることがよくありました。金銭問題を繰り返す人に理由を聞くと、ギャンブルにのめり込んでいることが明らかに。多重債務を防ぐために私にできることがないかと、ギャンブル依存症に悩む人の自助グループ「GA久留米」に参加し、当事者の思いを聞きました。生きていくための心を支える「杖」として、たまたまつかんだのがギャンブルだったと分かりました。
ギャンブル経験がある人のうち、依存するのは50人に1人ほど。一方で、誰が何にのめり込むかはわかりません。例えば「釣り」や「サウナ」、「スイーツ」なども。依存症は、脳の機能が弱くなり、欲求がコントロールできなくなる病気です。でも、周りの人は「意志が弱い」「自分に甘い」と思いがち。本人は依存症ではないと思い込んでいたり、認識していてもやめられず苦しんでいたりします。趣味と依存の境目が分からなくなり、治療を勧められても必要性を感じません。頭の中が依存対象のことに支配されてしまうのです。
15年前、家族に連れられて借金の相談に来た人がいました。話を聞く中で多額の負債があることが分かり、家族から激しく責められ、ひどく落ち込んでいました。本人も家族も依存症に関する知識がなく、相談先も知らなかったために、誰にも打ち明けられず一人で抱え込んでいたのです。
ギャンブル依存症と聞くと、「お金のトラブルに巻き込まれるのでは」とその人との関係を切ってしまうことがあります。脳の病気で回復に時間がかかり、すぐに行動を変えられない中で、本人は日々もがいています。本人も周りも正しい知識を身につけたり、悩みを分かち合ったりして関係性を結び続けることが大切です。責めるのではなく、話を聞くことから。皆で本人を孤立させないことが回復への一歩になります。
自助グループは誰でも参加できます。私自身も気持ちが救われています」と語る矢ヶ部さん