トップ > 計画・政策 > 人権・同和問題・男女平等 > 人権啓発 > 共に生きる(広報紙) > シリーズ【22】「頑張れ」ではなくその人を認める
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更新日:2023年03月31日 11時47分
長期離職者やひきこもりの人たちは、仕事にすぐに就くことが難しいのがほとんどです。相談者に寄り添って支援している就労支援員の友田直子さんに話を聞きました。
私が支援を行っている対象は、生活自立支援センターへの相談者や生活保護を受給している人です。当事業者に通い、共に作業する中で、その人に合った就労ができるように支援しています。年齢も幅広く、障害がある人やない人などさまざま。生活が不規則だったり、コミュニケーションが苦手だったりと不安を持つ人が多くいます。時間をかけて関係性を築き、その過程で初めて課題の本質に気付くこともあります。
40代のAさんは、高校を中退してから一度も働いたことがありませんでした。事業所には真面目に通っていましたが、コミュニケーションは不得意。自分から話しかけるということもありません。本人と話し、一緒に病院を受診すると自閉スペクトラム症という診断でした。結果を受け、就労継続支援A型事業所を紹介。今は、そこに通っています。新しい人に教える場面も見られるとのこと。見聞きした情報だけで判断するのではなく、課題の本質を見極めて寄り添うことが大事です。
参加者を見ると、「働きたい」とか「自分で現状を変えたい」と思っていても、考えすぎて何もできない、ただ漠然とした不安で動けない人が多いです。人間関係が原因で前職を辞めた場合は、なおさらですね。長期離職の問題を本人や家族だけで解決するのは、難しいことも多いと思います。そのときは、周りに助けを求めてほしい。それには勇気が必要。一歩踏み出すことで、つながりが増え、次に進むきっかけが生まれる可能性があります。きっかけがあれば、人は変われます。
人と関わることが苦手な人が、事務所に来るだけでも大変だと思います。それでも来てくれるから、私はその人たちを信頼することができるんです。共に時間を過ごす中で、信じてくれる、頼れる人がいることが分かると、少しずつ変わっていきます。周りの人は、話を聞いたり、関わっていることを伝えたりするだけでもいい。「頑張れ」ではなく、その人を認めることで前に進める人がいることを知ってほしいです。
「就労が決まっても、参加者が顔を出してくれるとうれしいですね」と話す友田さん