トップ > 計画・政策 > 人権・同和問題・男女平等 > 人権啓発 > 共に生きる(広報紙) > シリーズ【16】一人で抱え込まず周りを頼って
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更新日:2022年08月31日 09時03分
令和3年度、市の長寿支援課に届いた高齢者虐待相談や通報件数は、60件でした。「その数以上に相談したい人はいるはずなので、気軽に相談できる心のよりどころになりたい」と、支援を続けている仲尚美さんに話を聞きました。
虐待の兆候に気付いて高齢者本人に聞いても、認めないケースが多いです。「面倒を見てもらっているから」、「自分の育て方が悪かったから」と虐待を自分のせいにして、助けを求めないんです。施設の利用を説得しても、「家を離れたくない」と拒むケースも多いですね。虐待をする側も、手を上げたり大きな声を出したりしたことに強い罪悪感を抱き、誰にも相談できずにいます。私たち介護士が虐待に気付くきっかけは、何げない表情や雰囲気がいつもと違うこと。デイサービスのスタッフから「入浴時に傷があった」、「送迎のとき、家族の様子がおかしかった」と相談を受けて気付くこともあります。
虐待をするのは愛情がないからだと思われがちです。でも、介護をする側もされる側もお互いに思い合っているからこそ、すれ違いが生じていることがほとんど。どう介護をしたらいいのか分からなかったり、病気や年齢のせいで変わってしまったことを受け入れられなかったりするから衝突するんです。思いが強まって、すれ違いが起きたとき、デイサービスなどを利用して離れる時間を設けることも、家族同士が長く向き合うためには必要です。
「毎週やっていた趣味ができなくなった」、「友だちとお茶をしなくなった」など、介護をする側の小さな変化は自分の限界に気付くきっかけでもあります。「介護をするから自分のやりたいことができなくなって当たり前だ」と思う人はたくさんいますが、諦めなくてもいいんです。少しでもきついと感じたら、周りを頼ってください。介護スタッフを「話を聞いてくれる存在」と周囲の人が悩んでいる人に伝えるだけでも支援につながるかもしれません。介護する側が自分らしくいられる時間を持つことで、お互いが幸せに生きることにつながると思います。
「介護は完璧じゃなくていいんです」と話す仲さん